1993年から2005年くらいまでに大学を卒業した人たちを世間ではロストジェネレーション(以下 ロスジェネ)と呼ぶ。
年齢で言えば48歳から36歳くらいの人たちなんだろう。
そんな不遇の世代を生き抜いてきた我々がようやく日の目を浴びる日が訪れたのだ。
ロスジェネよ!今こそ転職だ!
ロスジェネ以前
オレの兄は、3歳年上で現在49歳。
目前に50歳が迫ってきた黄昏世代だ。
このたった3つの年の差の間にかかるとてつもない大きなクレバスが存在する。
それが就職氷河期だ。
兄の世代は、まだまだバブル経済真っただ中。
世間の話題はまさしくジュリアナ東京。
日本の経済はこのまま右肩上がりでガンガン成長していくと誰もが信じていた、そんなイカレタ時代。
我が家の兄は、日東駒専とか大東亜帝国にすら届かないような某私立大学。
決して高学歴でもなんでもない。
だが、そんな兄の家に届くのは莫大な量の就職案内資料だった。
リクルート社からは百科事典でも届いたんじゃねーか?というほどの膨大な就職案内資料。
そんなよりどりみどりの状態から兄は入社してやってもいい企業を選定していく。
まさに神の所業だ。
就職活動を始めた兄は、さっそく複数の企業から面接のオファーを受ける。
面接に来ていただけるのだから、企業側は面接にいらっしゃっていただいた応募者に交通費という名のお小遣いを渡す。
この金額がバカにならない。
下手すりゃバイトするより稼げてしまう。
面接長者が現れたという話すら聞く。
そして数社回っただけでいとも簡単に内定を複数ゲットし、見極めの業に入る。
まさしく神のイニシエーションだ。
そしていくつかの内定企業の中から、ここなら就職してやってもいい!という会社を選び、内定に同意する。
上から目線の女王様行為。
そして無事内定をいただいた会社は、社員の囲い込み政策を実践する。
せっかく内定をいただいた学生を万が一にも他の企業に横取りされてなるものか!
とばかりにお得意様の接待のような待遇で優遇され続ける。
中には海外旅行に連れて行ってもらえる内定者もいたそうだ。
兄のような三流大学卒でもこんなホストクラブのような扱いだったのだ。
全く盛りもしていない、これがその当時の真実の就職活動だったのだ。
ロスジェネの苦悩
そしてひとときの夢のようなバブル景気は、洗練された透きとおったスープが売りのしょうゆラーメンのように、あっさりと終わりを告げる。
そこに待っていたのが就職難。
織田裕二主演の「就職戦線異状なし」という映画が上映されたのが1991年。
この映画内容までよく覚えていないが、学生が就職活動で奮闘する系の物語だったような。
しかし、わずかその3年後には就職戦線は、大激戦を迎えることとなっていた。
我々より一つ上の世代から聞こえてくるのは、どれも悲観的な声ばかり。
「おい就職活動マジでやばいよ」
「もう就職諦めてパチプロでもやろうかな」
「50社受けて内定ゼロだよ」
「親父のコネでなんとかならないかな」
「もう就職活動に疲れたよ」
大学の就職課の前に張り出された求人板は、うつろな目で見つめる学生で人だかりとなった。
ホントかよ。
うちの兄貴の時は、全然余裕だったのに。
この3年で何が起きたんだよ。
その流れは当然のごとく我々世代にも訪れた。
当時、就職活動をなめ切っていたバカ学生のオレなんかに企業が目を向けるワケもなかった。
行けども行けども一次面接ではねのけられ、たまに最終面接までたどり着いても、内定というボスキャラはとてつもなく強かった。
そして負け続けること30社目。
ここがダメなら就職しない!と強い気持ちで臨んだ最終面接だったが・・・
ボスキャラのパンチ一発であっさりと跳ねのけられ、オレのHPは見るも無残に消滅した。
もうオレには無理だよ。
そして就職をあきらめた。
そんなオレに残されていたのはニートという暗闇だった。
ニートを脱し再起
20代ニートとフリーターを繰り返し、ようやくシステムエンジニアという道にたどり着くことができた。
初めて就職できた時、天にも昇るような感覚だった。
ほぼ誰でも22歳で初めての就職を味わうことができるものなのに、オレは就職という言葉を聞くまでに長い期間を要してしまった。
やっとあの強かった内定というボスキャラを倒すことができたんだ。
長かった。
ホントに長い道のりだった。
そして、システムエンジニアとして活動しだしたオレはみるみると力を着けていった。
数年後、独立する社長にヘッドハンティングされ、さらに立場は急上昇。
一時は社内のナンバー2にまで登り詰めることができた。
しかし、オレのリベンジはまだ終わっていない。
ロスジェネの逆襲
時は2018年。
2度目の東京オリンピックまであと2年。
世間は、一度目の東京オリンピックとは様変わりしている。
あの時急ピッチで作られた高速道路の料金所は無人化され、街中に設置された公衆電話も今やスマートフォンに切り替わった。
そして訪れた高齢化時代。
少子高齢化が急速に進み、2018年に成人を迎えた若者はわずか123万人。
団塊世代が引退し、今日本中が深刻な人手不足に陥ってしまっている。
ロスジェネ世代達よ!
今この時こそもう一度立ち上がろうじゃないか!
究極の人材難、究極の売り手市場。
オレたちが味わった、クソのような就職活動の思い出を、新たな記憶で塗り替えしてやろうじゃないか。
ちょっと転職サイトに登録すれば、スカウトがバンバンやってくる。
止まらないスカウトの嵐。
今こそオレたちを安値で買いたたいた奴らを見返す時なんじゃないか!
ロスジェネ世代は、このまま黙って犠牲者になってはいけないんだ。
究極の売り手市場の中に自分という価値を投じてみようじゃないか!
こんなチャンスは二度とない。
ロスジェネ世代の真の逆襲が今始まろうとしている。