ITの仕事はなくなるどころか増え続け、慢性的な人手不足。
当然、IT系の会社を起業した社長さんはさぞかし儲かっていることだろう!
と思うかもしれませんが、いわゆる派遣、SESを中心としたITとは名ばかりの人材サービスを経営している会社なんて、そんなに懐が潤う訳がありません。
そんな会社の社長さんが、湾岸エリアのタワーマンションを購入したり、私用・社用問わず高級外車を乗り回し始めたら、その会社伸びしろは望めません。
てか、衰退していく一方でしょう。
もし、そんな兆候が見え始めたら、さっさと会社に辞表を出し転職しちゃいましょう。
社長が外車を乗り始めたら
IT派遣の会社って儲かるの?
ITでもいろいろな形態の会社があるのは皆さんご存知でしょう。
ソフトバンクグループのようなモバイルフォンやYahoo!Japanというポータルサイトを運営する企業。
DeNAや現在のMixiのように携帯、スマホ向けのゲームを中心にしている企業。
富士ソフトやジャストシステムのように自社製のソフトウェアを製造、販売している企業。
楽天のようにショッピングサイトを中心にしている企業。
サイバーエージェントのようにブログサービスやネット広告、動画配信を提供している企業。
メルカリのようなSNS向けフリマアプリを開発、運営している企業。
サイボウズのおうなグループウェアを開発、運営している企業。
そんなIT業界に寄生するように大繁殖しているのが、派遣やSESを中心としたIT派遣会社。
一昔前までは正社員雇用を基本とする特定労働者派遣事業は、届け出だけで開業することが出来たためIT派遣会社が乱立され今にいたります。
そんなIT派遣会社って儲かるのでしょうか?
残念ながらそんなに儲かる事業ではありません。
儲かるのは前述したメルカリのようにアプリを開発したりソフトやゲームを開発して運営している企業。
これらの企業は寝ててもチャリンチャリンお金が入ってくる、高収益のビジネスモデルに成功した企業です。
一方IT派遣会社は人を売ってその利ザヤ分だけが売り上げになるビジネスなので、右肩上がりで利益が上がっていくようなビジネスでありません。
派遣マージン率の話
派遣マージン率とは、いくらの単価で契約し、いくら給与として還元した、その割合のこと。
派遣大手のパーソルテクノロジー様の派遣マージン率はこちらに記載されています。
https://persol-tech-s.co.jp/corporate/siteinfo/disclosure/
東京地方の一般的な派遣の場合36.9%となっています。
この数字の意味するところは、月額50万円の単価で働く人は、約33万5千円の給料を受け取るということ。
その差額、16万5千円が会社の利益。
え?やっぱり派遣会社ってボロ儲けじゃん!
と思ってはいけません。
この金額には、会社が負担する分の社会保険料は含まれていません。
社会保険料分をプラスして派遣社員の給料は40万円とします。
すると派遣マージン率は20%まで下がり、会社の利益は10万円ということになるのです。
この10万円は経費の含まれない利益です。
この10万円を全派遣社員からかき集め、派遣会社は事業運営に必要な経費に使います。
役員の報酬
事務所の家賃
管理スタッフの給料
広告宣伝費
福利厚生費
教育費
などなど・・・
これらを払いつつも莫大な利益を上げるためには、会社は大量に社員を雇わなければいけないんです。
だから社員数500人を超えていないような派遣会社は、そもそもそんなに儲かってない。
売り上げは確実に計算できても、利益自体はカッツカツという会社の方が断然多いのが現実なんです。
なぜIT派遣会社は乱立し上手くいくのか?
それでもIT派遣会社は、一度軌道に乗ってしまえばなかなか潰れないのも大きな特徴です。
というのは、売り上げだけは安定して上がることなんです。
スマホアプリとかゲームなんて、ブームが過ぎてしまえばあっという間に売り上げは奈落の底。
商品を販売するような企業であれば、売れなければ当然売り上げになりません。
ですが、IT派遣会社は社員を採用し、現場にいてさえくれれば安定的に売り上げが立つのです。
しかもIT系のエンジニアを派遣で受け入れる会社って大体大手。
大手なので入金も滞りなくしっかりしています。
それほど利益は爆発的に伸びなくても、IT派遣会社はそこそこ生き延びれるのです。
経営者の手腕とか才能とかアイデアとかほとんどいりません。
人を雇って売り込む、ただそれだけで経営が成り立つ。
だからIT系の派遣会社は増え続けてもそんなになくなることはないのです。
なぜタワマンとか外車はダメなのか?
長い長い前振りになってしまいましたが、それじゃなぜタワマンとか外車はダメなのか?
前述したとおり、ITの派遣会社なんてITという名前は着きますが、莫大な利益を上げられるビジネスではない。
実は、コツコツと売り上げを積み上げていく堅実なビジネスモデルなのです。
なのに、オレ様はIT会社の社長だ!
と勘違いし、どんどん社長が生活のレベルを上げていってしまうのです。
一度上げてしまった生活は、なかなか元には戻せません。
最高級のベンツを乗り回した後、自転車で通勤なんてバカらしくて到底無理。
タワマンに住んだ後、狭い賃貸に引っ越すなんて到底無理。
ちょっと移動するのにタクシーを利用していた人が、ギューギュー詰めの満員電車に乗るなんて到底無理。
これが会社の経営を圧迫していくのです。
派遣会社ってガンガン利益が出るビジネスモデルじゃありませんので、会社は極力経費を削る必要があります。
とはいえ、広告費を削ってしまうと人を雇うことはできない。
福利厚生面を削ってしまえば社員は辞めてしまう。
管理スタッフを削ってしまうと社内の管理が行き届かなくなりトラブルが頻発する。
事務所を粗末にしてしまうと応募者がしり込みして入社しなくなってしまう。
となれば、一番削れる経費というのが役員報酬なのです。
IT派遣会社にとって利益を圧迫する役員報酬なんてムダでしかありません。
とはいえ、オーナー企業としてリスクを負って会社を興した社長はある程度報われるべき。
だからこそ、身の丈に合った役員報酬を受け取るべきなのです。
常に会社の利益が最優先。
会社の社員が最優先。
会社のスタッフが最優先。
と考える社長であれば、自分の見栄や自己満足のためにタワマンなんかに住みませんし、高級外車なんてムダとしか思えないはずです。
そう思えていない!ということは、その社長は会社を自分の所有物と考え、社員やスタッフの幸福なんて考えていないということになるのです。
そんな会社がこれから先伸びると思いますか?
信頼できるスタッフがついていくと思いますか?
そんなことはあり得ないのです。
IT系の派遣会社の社長が贅沢をし始めたら、その時点で社員は転職を考えるべきでしょう。