社員200人年商10億の会社が一瞬で倒産寸前になった話【経営は難しい】

先日のGoogleのアップデートで、大きな被害を受けているという方が相当数いるようですね。

経営ってホントに難しいと感じる今日この頃。

実は以前取締役をやっていた会社が、一瞬で倒産しかけたことがあったんです

それも一度ならず数度、本気で倒産を考える瞬間があったのです。

社員数200人年商10億の会社がどんなことがあると一瞬で倒産寸前になってしまうのか?

今経営で苦しんでいる方にとって、少しでも清涼剤になればと思いその時の話を書いてみます。

成長途上の会社が一瞬で倒産寸前

会社の遍歴

まずは会社の遍歴から(以降この会社をA社と呼びます)。

A社は、大手人材派遣系の会社に勤めていた方が独立して起こした会社。

業務内容は、常駐型のシステムエンジニアをSIerと呼ばれる会社に人材を提供する、名ばかりIT企業で実態は派遣会社。

A社の社長は若くて意欲もあったおかげか、スタートアップにも拘らず数多くの要員確保に成功し、企業当初から20名近くのシステムエンジニアが所属していた

スタートアップ会社へ転職すれば年収100万円くらい簡単に上がる

起業当初から現役のシステムエンジニアを20名近く確保できたため、いきなり年商数千万円ベースの売り上げは立った。

だがしかし、いかんせんその後のノビシロがない。

起業したばかりで会社の履歴も浅い、さらに社員数の20名くらいの会社には、求人サイトに広告を出しても応募が来ないのです

常駐型のシステムエンジニアを提供する派遣会社は、お金を稼いでくれる社員が増えないと売り上げは伸ばせない。

そのため、起業後1年くらいは停滞状態が続いていった。

この状況を打破するため、A社はある決断をする。

システムエンジニアを採用できないのなら、全くの未経験者を採用して育成すればいいんだ!

これが禁断の果実だと気付くまで、数年の歳月を費やすことになる。

現場に配属させているバリバリのエンジニアを社内に戻し、研修プログラムを構築し新人育成に力を注いだ。

この取り組みは見事にハマり、社員数はわずか2年で100人以上増え、一気に200人規模の会社に成長を遂げる

急成長から奈落の底へ

一気に社員数を増やしたA社だが大きな悩みを抱えていた。

それは、未経験で採用した社員が思うように売れないコト

いくら一線で働いていたバリバリのエンジニアが講師を務めているとはいえ、研修しかやってない未経験のエンジニアは思うように市場で捌けない。

ITエンジニアの価値はなぜ経験で決まるの?【実務経験は価値あり】

そんな時、ある取引先から千載一遇のチャンスが舞い込んでくる。

その会社(以降S社と呼びます)は、ある業務アプリケーションの開発に成功し、一気にシェアを伸ばしていた。

シェアが急成長したためサポート体制が追い付かず、とにかく人が欲しい。

業界未経験でも構わないからとにかく人を投入してほしい

願ってもないオファーを受け、A社は未経験で採用した社員を次々にS社へと送り込んだ。

誰でもいい。人さえいれば取ってくれる。

もうこうなったら研修なんて必要ない。

採用したらすぐさまS社のプロジェクトに投入することで、A社は右肩上がりで売り上げを伸ばしていった

順調に売り上げを伸ばすことに成功したA社だったが、そこに悪夢のような世界的事件が発生する。

悪夢のような事件とは、あのリーマンショック

リーマン・ショックは、2008年9月15日に、アメリカ合衆国の投資銀行であるリーマン・ブラザーズ・ホールディングス(Lehman Brothers Holdings Inc.)が経営破綻したことに端を発して、連鎖的に世界規模の金融危機が発生した事象を総括的によぶ。

Wikipediaより引用

大手SIerはリーマンショックに大きな影響を受け、一気に人材放出に踏み切った。

余談ではあるが、大手SIerはエンジニアを正社員として採用することは控え、高額でも派遣のエンジニアを起用して、不景気の有事の際の対策のため、調整弁にしているのは言うまでもない。

S社もリーマンショックの影響は大きく、大量に採用していたA社の社員をすべて契約解除に踏み切ったのだ

客先常駐型派遣会社の最大のデメリットは、社員が現場に出てくれないとただひたすら赤字を垂れ流すこと。

だってみんな正社員だから、社内にいてサボっていても給料は支払わなければイケない。

A社は一気に50人以上の不良債権を抱え込むことになってしまった

でも、その50人を他の現場に配属させればイイじゃん!

と思っていたが、そう簡単にはいかなかった。

研修もそこそこにS社のプロジェクトに配属させてしまったため、戻ってきた社員は全員スキルがついていない。

S社が開発したアプリ以外の経験がないので、全くつぶしが効かなかったのだ。

その上、世の中はリーマンショックの影響で人員を最小限に絞ってきている。

これじゃ配属させたくても行かせる現場がありゃしない。

50人以上の待機状態は1か月、2か月と続きA社の資金はついに底をつき始めた

倒産危機からの回復

A社の社長はこの時真剣に倒産を考えるようになる

50人以上の社員の待機状態が、これ以上続いたらもうどうにもならない。

しかし、そんな時救いの神が舞い降りることになる。

それは雇用関連の助成金だった

リーマンショックにより社員の雇用に懸念を感じた政府は、一時的な助成金の発行を決断。

社員を解雇しない代わりに、一定の研修プログラムを受講すればその分のお金を支給しますよという制度。

まさに渡りに船となった助成金のおかげで、A社はなんとか最大の窮地を乗り切ることに成功した。

とはいえ、リーマンショックの傷跡は想像以上に大きかった

会社の健康状態を判断する財務諸表はボロボロになり、経営状態に不安を感じた社員が次々と会社を離脱していった。

200名近くまで膨れ上がった社員は、大きく規模を減らし、1年間で40人近い社員が退職し、最大80人以上社員数を減らすことになってしまった

会社を倒産させないためには

会社を倒産させない方法なんて正解はないでしょう。

ですが、この時の教訓からコレだけは言えます。

売り上げの柱を一点に集中させないコト

一つの会社、一つの取引先、一つのお得意様、一つのプロダクト、一つのアプリケーション。

なんでも一緒なんですが、一つの柱に依存してしまうと、その柱が折れた時、会社は致命的な損害を被ることになるのです。

会社経営に大事なコトは、リスクヘッジです。

一つの柱を作ることすら大変なことはもちろん理解しています。

ですが、一つの柱が育ったその時こそ、新たな柱を作る大きなチャンスでもあるのです。

一つの柱に依存しない。

言葉で言うと簡単なのですが、これが会社をつぶさない鉄則なんだという事を身をもって痛感した出来事でした。

 

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