派遣や業務委託で客先に常駐しているお仕事では、今も昔も頻繁に行われている「引き抜き行為」。
特に客先で常駐するエンジニアが多いIT業界では、引き抜き行為は当たり前のようにとまでは言いませんが日常的に行われています。
小さい会社や派遣で勤務しているエンジニアからすれば、常駐先の名の知れた大企業からお誘いがかかれば、ホイホイとついていきたくなる気持ちは十分わかります。
ピカタロウ
こう言っている自分自身が何度も引き抜き要請をいただき、心が揺れたこともありましたのでw
ただ、この引き抜きなんですが、これまであまりイイ話を聞いたことがありません。
ここでは常駐先・外勤先からの引き抜きに関して実例を交えてご紹介します。
これまで500人以上の退職したエンジニアを見てきた経験を踏まえてご紹介いたします。
目次
常駐先・外勤先からの引き抜き
そもそも引き抜きは違法行為?
常駐先企業がエンジニアを引き抜く行為にはどんな問題があるのか?
そもそも違法行為なのかどうか?となると違法ではないというのが大方の見解のようです。
派遣や業務委託契約の契約中に強引に引き抜くような行為は違法となる可能性もあるようですが、契約を満了しその後常駐先の会社に転職という形を取るのであれば、職業選択の自由が尊重されるようです。
とはいえ、所属元の会社で「競合他社への転職を禁止する」的な書面にサインしている場合は、違約金や退職金の減額などが発生する危険があることは認識しておいた方がイイです。
大企業は引き抜きには消極的
さてここからはタイトル通り引き抜き要請には乗らない方がイイという話をご説明します。
そもそも大企業に限らず大抵の企業は、外注で勤務しているエンジニアの引き抜きにそれほど積極的ではありません。
それにはこんな理由があるんですね。
- 所属会社とモメたくない
- エンジニアが採用基準に満たしていない
- 利益が下がる
- 正社員雇用はリスクが高い
これらを1つずつ解説していきます。
1.所属会社とモメたくない
極力所属会社とモメたくない!これがパートナーエンジニアを引き抜きたくない一番の理由だと思います。
優秀なエンジニアは当然所属会社でもエース級の人材です。
人柄も良く技術力もあるエンジニアは、喉から手が出るほど欲しいところですが、その人材を引き抜くことによって所属会社から訴訟を起こされるような事態は極力避けたいところです。
エンジニアの未来を思ってくれるような善良な会社ばかりではありません。
エンジニアを提供している会社だって、自社のビジネスのために必死です。
自社で育て上げた貴重な人材を簡単に手放すわけにはいかないんですね。
中にはしつこく訴訟をかけてくる会社もあるでしょうし、その情報が外部に流れたら悪いうわさも飛び交うでしょう。
また、せっかく多くのエンジニアを提供してくれている会社なのに、一人のエンジニアを引き抜いたことにより、その会社との取引が無くなることは避けたいのが本音です。
だからよほどのことがない限り、常駐先の会社が引き抜きを仕掛けてくることはありません。
2.エンジニアが採用基準を満たしていない
大企業の場合、採用基準も高くなります。
- 学歴
- 資格
- 経験
- 経歴
- 賞罰
中小企業に所属するエンジニアは、技術力はあるけれども、これらの基準を満たしていないケースが多いのです。
時には技術力を重視し、経歴には目をつぶることもありますが、あまり例外を多く作りたくないのが受け入れ企業側の本音です。
3.利益が下がる
多くのエンジニアは、こう思っているはずです。
「自分は常駐先と数十万円で契約しているけど、正社員になったらもっと安く雇えるから引き抜き先にとってお得なはずだ」
これは大きな勘違いです。
近年エンジニアの価格は高騰し、経験値の高い優秀なエンジニアであれば、70万円、80万円超という金額で契約されます。
ですが大企業のエンジニアの原価はもっと高かったりするのです。
わかりやすく例を出すと、大企業が500万円の案件を3人月で受注したとします。
3人で取り掛かって1か月で納品する案件と考えてください。
この案件に大企業のプロパ社員3人で取り掛かったらどうなると思いますか?
ほぼ利益は出ないどころか、下手すりゃ赤字です。
なぜかというと大企業のプロパ社員は、月の原価が100万円を超えちゃうんです(もちろん会社規模によって異なります)。
平社員でも100万円超、幹部社員なら150万円を超えるみたいです。
それがパートナー社員の場合、90万円くらいの原価でおさえられるのです。
だからパートナーのエンジニアを正社員にすると、逆に利益が下がってしまうんですね。
プロジェクトの利益を出すためには、プロパ社員を極力少数にしてパートナーの比重を上げたいのが本音です。
結局70万円、80万円払ってもパートナーの方が安く済むってことなんです。
正社員はリスクが高い
正社員にしてしまうと前述のような利益面の不具合もありますが、大きいのは社会保険などの福利厚生面です。
パートナーであれば、必要なかった経費がかさんでしまうのです。
また、一度正社員雇用してしまうと、今の日本の社会ではなかなか解雇することができません。
システム業界は、最悪案件がなくなり利益を圧迫し始めたら、エンジニアをリリースしてしまえば経費削減できるという構造になってます。
残念ながらパートナーのエンジニアは、企業にとって調整弁になっているのです。
だから可能であれば正社員は増やしたくないものなのです。
以上のようにそもそも企業側は積極的に引き抜きはしたくないんです。
これを踏まえて引き抜きの実例を見ていきましょう。
引き抜きの実例
もちろん良い例もあるのでしょうが、自分が知っている引き抜きの実例はこんな感じが多かったのは間違いありません。
正社員雇用ではなかった
大企業に引き抜かれたのに正社員雇用ではなく、契約社員での採用だったというケースはかなり多いです。
もちろん契約社員から正社員への切り替えという前提がある場合もありますが、中には契約社員を限界まで継続され契約を切られたという話もあるみたいです。
また契約社員の期間に一定の条件をクリアしないとイケないというノルマがあったり、かなり長い期間賃金が押さえられたりすることも多々あるようです。
給料が下がった
引き抜き先に移籍したのに給料が下がってしまう人も少なくありません。
ピカタロウ
実際自分も大手から引き抜きの話を受けたことがありますが、当時の収入より1割減程度でのオファーでした。
知人の多くも大企業の方が少ないという声も多く、あまり条件的には期待できないと思った方がイイですね。
大企業だからその分安定してるし、福利厚生面もしっかりしているし、賞与もちゃんともらえるし、将来昇給するし・・・
と思っているのであれば、それは大きな誤解です。
まず中途の場合、生え抜きの社員とは違い、出世しにくいのは間違いありませんので、昇給は非常に難しいです。
また、福利厚生がしっかりしているからといって収入面に直結するわけではありません。
安定していると思っていても、どこかで出向させられたり、真っ先にリストラの対象になるのは中途社員です。
その辺は十分意識しておくべきです。
本社採用ではなかった
採用されてみたら、本社での採用ではなく関連子会社としての採用というのもよくある話です。
本社よりも子会社の方が採用基準が低く設定されているところが多いため、本社では採用できない人材は子会社採用にしてしまうのです。
大企業の子会社ってこちらでも紹介しましたが、下手すりゃ中小企業よりも劣悪です。
こちらで詳しく紹介しています。
大企業の子会社って転職先としてどうなんだ?【失敗しない転職選び】せっかく憧れの会社に入れたのに、子会社じゃ何の意味もありません。
個人契約になった
これは今まで聞いた中で最も最悪なケースです。
常駐先から「ウチで働く?」と誘われた言葉を真に受け、所属会社にその旨を報告し退職を了承してもらう。
いざ、常駐先に話を聞きに行くと「正社員採用は厳しいので個人契約でお願いします」とのことでした。
しかもその企業は、個人事業主とは直接契約をしていないらしく、その会社が紹介した会社を経由して契約してほしいとのこと。
それじゃ、今までの契約と変わらないじゃん!話が違う!
とゴネてみても後の祭り。
さすがにその契約には納得がいかなかったため、元の所属会社に戻る交渉をしに行ったが、そんなもん通るワケもなく・・・
結局個人事業主になるしかなく、以前よりも不安定な生活になってしまったそうです。
スキルが下がった
ある友人は引き抜き先の大企業の子会社に入れたはいいけど、自分がやりたい仕事は全然できなくなってしまったそうです。
大手になればなるほど、仕事の内容は上流工程になっていく。
ただその会社の上流工程というのは名ばかりで、ほとんどがスケジュール管理と承認業務の管理作業。
実機に触れる機会も無くなり、コードを書く機会も無くなり、腕は錆びついていくばかり・・・
しかも大企業とはいえ子会社だから将来の安定感もなく、むしろ不安ばかり募るようになったんだとか。
所属会社とモメてしまった
所属会社の社長が仁義にうるさいタイプ。
同業他社に移籍するのはもちろん、常駐先に引き抜かれるなんてもってのほか。
常駐先に移籍することが分かった途端、メールや電話での嵐のような説教の毎日。
社長自ら常駐先に食って掛かり、訴訟するぞと大暴れ。
結局一度会社を辞めて数か月フリーランスとして過ごし、数か月後に静かに常駐先に拾ってもらったそうです。
今でもその社長の陰におびえながら過ごす毎日なんだとか・・・
まとめ
常駐先への直接移籍というのは、原則あまりおススメしません。
受け入れ側の会社もあまり乗り気じゃないし、所属会社にとっても大きな損失です。
会社同士がモメるキッカケにもなりますし、精神的にダメージを受けることもあるでしょう。
引き抜かれるということは大変名誉なことではありますが、可能であれば所属会社と取引関係がない会社へ移籍すべきです。
どうしても常駐先に行きたいのであれば、しっかりと仁義を通す、双方の会社には迷惑をかけないよう根回しを確実にするよう話を進めるべきです。
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