前職の会社の同僚から「会社を辞めて転職した」との連絡がありました(以下Sさんと呼びます)。
Sさんは「転職したら年収100万円上げてくれたよ!」
と大喜びで話していました。
そんなSさんが転職したのは社員数わずか3名という会社。
社員構成としては社長と社員1名とこの度入社したSさんの計3人。
「オレはSESしかやらない会社はイヤだ」と言って社員数3人の会社に転職した元同僚は今も変わらずSESで働いている。
— ピカタロウ@副業システムエンジニア (@piccataro) December 7, 2019
果たして社員数10人以下の零細企業と呼ばれる会社への転職は「有り」なのでしょうか?
ピカタロウ
数多くの転職者を見てきた筆者が多角的に分析してみます。
失敗しない転職先選びの参考にしてみてください。
目次
社員数10人以下の会社への転職
転職者の経歴
まず社員数3人の会社に転職したSさんの経歴をご紹介します。
Sさんは今年40歳。
高校卒業後、東北の小さな町から上京。
上京当初は肉体労働的な仕事をしてましたが、その後専門学校に通いIT系の派遣会社に就職。
派遣会社に3年ほど勤務した後、前職の会社に転職しました。
転職後は主にプログラマとして約10年会社に勤め、6月に退職。
その後今の会社の社長と知り合い転職したそうです。
Sさんの得意分野はプログラミングですが、資格の勉強などは苦手なタイプで、管理職もやりたくないタイプ。
そのため前職の会社では昇進ルートに乗ることが出来ず、ずっと平社員のまま会社を辞めて転職しました。
小さな会社のメリットその1
Sさんは今の会社に転職して100万円の昇給に成功したそうですが、おそらく彼が他の会社に転職したら100万円も給料が上がることはあり得なかったでしょう。
40歳でIT経験は15年以上になりますが、プロジェクトリーダーとして動くことはできず、ずっと作業者的立場のプログラマしかやってません。
管理職・リーダー経験のない40歳プログラマとなれば、転職市場の評価はそれほど高くなることはありません。
一般の会社には給与テーブルがありますので、40歳・資格なし・管理職経験なしでは、高い給与を提示することはできないでしょう。
ですが、小さな会社には給与テーブルなんて存在がなく、社長の言い値で給与を決めることが可能です。
これはスタートアップ会社を利用して大きく収入を上げる典型的なパターンです。
スタートアップ会社へ転職すれば年収100万円くらい簡単に上がる堅苦しい給与査定なんかが存在しない小規模の中小企業は、社長の裁量で金額を決められるので劇的な収入増が期待できます。
Sさんの転職理由が「給料を上げるという目的」であれば大正解と言えるでしょう。
小さな会社のメリットその2
Sさんは、転職早々夏季休暇を取得し長期間の旅行に行ったんだそうです。
入社して3か月も経っていない時期に、5日間も休暇を取得したそうですが、これも中小企業だからこそできること。
社員数10人以上の会社では、就業規則の作成が義務付けられています。
逆に言えば社員数数名の会社は、就業規則を作る義務はなく、労働基準法の範囲なら好きにできるということです。
そのため、10人以上の会社の場合、特定の社員だけ優遇措置を与えることはなかなかできません。
そもそも就業規則がないにしても有給休暇を取得できるのは入社後6か月後。
たった3か月で5日間も休暇をもらえるのは、社長さんの裁量によるものです。
堅苦しい規則にとらわれないのが小さな会社の大きなメリットです。
小さな会社のメリットその3
Sさんは、長く客先に常駐する派遣・SESという働き方をしてましたが、できれば社内で開発業務をやりたい!というのも前職の会社を退職した理由でした。
転職先の会社に移籍後、今時点ではSESで働いているそうですが、ゆくゆくは社内の開発事業に携わる予定なんだそうです。
小さな会社の場合、社員の思いが直接社長に届きますので、社員が「やりたいこと」を実現してくれるベースは整っています。
小さな会社は、これから先の未来を夢見ることができるのも大きなメリット。
今は大規模の会社になってしまったけど、創業当初のみんなでガムシャラに夢見て働いていたころが一番楽しかったという話はよく聞かれる話です。
小さな会社メリットその4
小規模の会社の場合、常に人員不足です。
財務だとか総務の仕事は社長が兼任でしょうし、営業や広告的仕事はエンジニアの社員が兼務しなきゃ回らないでしょう。
その分、小さな会社の場合定年退職やリストラにおびえることはありません。
65歳どころか70歳になっても辞めてもらうと困る。
代わりになる人がいないのが中小企業なのです。
大企業は働き方改革を推進するほど人が余っています。
定年を過ぎてまで働いてもらいたい人材なんて大企業には存在しません。
定年なんて気にせず働けるのも小さな会社のメリットなのかもしれません。
デメリットその1
何よりも小さな会社の最大のデメリットは将来性です。
社員数3人で一人は社長。
どんなビジネスをメインにしているのかまでは聞いてませんが、新たに入社した社員にSESで外に出さなきゃならない時点で「自社だけで完結するビジネスモデルではない」ことは明確です。
おそらく社長も外に出て売り上げを上げている「プレイングマネージャ」で、売り上げも小さく利益もほとんど出てないのでしょう。
社員数3人の会社が売り上げを伸ばし、10年先、20年先を見ていくのなら早い段階でビジネスモデルを確立し、事業計画を組みなおさなければイケない時期がくるはずです。
小さな会社が生きていくのは簡単なコトではありません。
将来伸びる可能性よりも、将来倒産してしまう危険の方が上回るのが小さな会社の最大のデメリット。
デメリットその2
小さな会社が人材を確保するためには、知人・友人などのコネを使うか?お金で釣るか?しかありません。
Sさんの場合、明らかにお金で釣って採用されています。
市場評価よりも100万円高いお金で釣ったということは、100万円高い分の働きをしてくれないと、この会社はムダに高い原価を払っていることになります。
高い原価を払うということは、それだけ利益が圧迫されるということ。
小さな会社は、その分利益率が落ちてしまうのです。
スタートアップで雇ったプレミアム価格の社員をペイするには、その先事業が順調に伸びていき、その後雇った社員は市場の適正価格で採用していく必要があるんです。
それが出来ない場合、プレミアム価格で雇った社員は負の遺産になっていってしまうのです。
社員数10人以下の会社へ転職すべきか?
あくまでも今回Sさんが選んだ会社が「有り」か?「無し」か?と聞かれれば、迷わず「無し」となります。
市場価値よりも100万円も高い給与で社員を採用するのであれば、それなりのビジネスモデルが存在しないと成立しません。
今はYoutuberやブロガーで数千万円どころか数億稼いでしまう人がいますが、このような利益率があり得ないほど高いビジネスをしているのであれば「有り」です。
それがなく、市場価値よりも高値の社員をSESで出しているようでは、会社の未来に不安しか感じることはできません。
しかもSさんの年齢は40歳。
この会社が倒産してしまうと路頭に迷うことになりかねません。
では、このSさんの会社ではなく、一般的に社員数10人以下の会社は「有り」か?「無し」か?
これは会社のビジネスと自分の退職目的にによっては「有り」です。
まず会社のビジネスモデルですが、以下のようなビジネスなら社員数なんて関係ありません。
- 利益率が高い
- すでに大きなシェアを持っている
- 特許技術がある
早い話がガンガン儲かるビジネスをやっている会社なら、むしろ社員数が少ない会社の方が狙い目です。
社員一人当たりの取り分も増えますし、将来会社が大きくなった時、既得権益になれるポジションだって狙えるでしょう。
次に自分の転職の目的が「お金」だけであればこれも「有り」です。
20代から30代前半くらいで、とにかく今収入を引き上げたい。
後先考えずに「お金」だけが目当てなら全然ありです。
その会社で給料ベースを引き上げて、経験値を積み重ねたら次の会社を探せばいいだけですので。
とはいえ、40代で安定した会社で仕事がしたいという思いがある人は、もう少し規模が大きくて実績を積み重ねている会社の方がおススメです。
転職先選びは、人生のフェーズに会社の大小も見極めていくべきなのです。
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