会計士・税理士・行政書士・社会保険労務士といった士業の仕事はいずれITAIによって奪われる。
そんな士業の未来を懸念する声もよく耳にします。
ですが、どんなにAIが進化したところで士業の仕事がAIに取って代わる未来がやってくることはあり得ません。
AIに奪われる!と叫んでいる人は、そもそも士業の仕事の特徴を知らないからそんなことが言えるのです。
現役のシステムエンジニアであり、社労士の資格も持つ筆者が士業のリアルとAIの未来をお伝えします。
士業の仕事とAI
税理士がなくなった国がある
東ヨーロッパのエストニアという国では、もうすでに税理士という存在がなくなったという話を耳にしたことはあるかもしれません。
エストニアでは、政府の電子化政策が促進され、その上税制改正により税のシステム自体が簡素化し、会計士・税理士そのものの存在が必要になったというモノです。
実際には、税理士の存在が必要なくなったのは個人向け業務のみという話もあるようですが、この話の真意は他の記事や媒体にゆずります。
ここで筆者が言いたいのは、そもそもエストニアという国と同じ状況が未来の日本に訪れるのか?
ということです。
エストニアは東欧のとても小さな国で、人口は130万人程度。
先日埼玉県さいたま市の人口が130万人を超えたというニュースがありましたが、日本の一部の市と同程度の国です。
人口も多く、税法も複雑な日本社会が、これから先どんなに努力しても税理士が不要になるほど制度が改正される未来なんて全く見えてこないはずです。
仮に100歩ゆずってそんな未来が来たとします。
それでも税理士・会計士の仕事がAIに奪われるなんてことはないんです。
士業の仕事のリアル
以前、ある行政書士の先生がこんなエピソードを紹介されてます。
ある開業志望の若者が、開業に必要な書類をすべて独学で調べて行政書士の先生に持ってきたんだそうです。
その資料は非常に完成度が高く、専門の行政書士の先生が見ても一切手を入れる必要がないほどだったのです。
行政書士の先生は「よく調べてらっしゃいますね。このまま提出しても全然大丈夫ですよ。」とその若者に伝えたところ、
若者は・・「いや、専門の先生にチェックしてもらい先生に提出してほしいんです」
と答えたんだそうです。
その若者は、自分で調べて書類を作ったが、本当にコレで正しいのかどうか?
尊敬できる専門家の意見を聞いて専門家にお願いしたかったんだそうです。
自分自身もこんな簡単な書類、別に自分じゃなくても提出できるのになんで数万円もかけて依頼するんだろ?と思っていた時期もありました。
士業のクライアントは、ペラペラの書類の作成をお願いしたいのではなく、専門化としての貴重なアドバイスにお金を払っているのです。
士業は人間じゃなければできない
社労士の仕事でも法律や判例をいくらひっくり返しても、判断に困るような依頼が来ることがあります。
どんなに法律を隅から隅まで調べても、ベテランの社労士に聞いても、年金相談書や労働基準監督署に聞いても正解がない!というケースがあるんです。
そんな依頼でもなんとかクロージングしなければイケない。
- 就業規則を変更したり
- 新たな制度を作ったり
- 特例を制定したり
- 社長さんと協議したり
その場の状況に応じて自分の知識や経験をベースにして新たな着地点を探していく。
こんなことは社労士に限らず、他の士業でもよくある話。
コンピュータに絶対に解決不可能な事例が士業の仕事では山ほどあるのです。
士業は社長の相談役
また、士業は社長さんのよき相談相手じゃなきゃ勤まりません。
社長さんというのは企業規模がどうあれ、みんな孤独な存在なのです。
- 事業のことを本気で相談できる相手がいない
- 本気で話せる信頼できる部下がいない
- いつも疑心暗鬼になる
そんな社長の孤独を癒すことができるのは、士業などのコンサルタントの役割なのです。
AIがいくら進化したところで、社長の悩みを聞いてあげることは出来ません。
AIが社長の孤独を癒すことなんて出来るはずがないんです。
まとめ
システムの専門家は、面倒くさい仕事は全部システム化できると考えます。
システムの専門家じゃない人たちは、システム化にならない仕事に日々追われています。
結局この両者の考えが完全に一致することなんてあり得るわけもなく、結局人間の仕事すべてがAI化される未来なんて来るわけがないんです。
士業の仕事というのはそれだけ複雑でこれから先もずっと価値のある仕事なんです。
もし、将来AIに奪われる・・・なんて心配をして資格試験にしり込みしているのであれば、そんな考えは無用です。
国家資格は今も昔も無双です。
迷っている人は、絶対に資格試験をゲットして士業の世界を体験してみてください。
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